ゆるやかに壊れていく日常……あたたかさの中の重苦しさが・・おすすめ度
★★★★★
呉に嫁いで半年……すずの日常にも少しずつ「戦争」の色が濃くなり始める。
闇市、防空壕……戦争という暗闇がじわじわと日常を染めていくなか
すずはあくまで健気だ。
本書は連載12回目(昭和19年7月)から、連載28回目(昭和20年4月)まで。
上巻と同様、とりたてて反戦平和を叫ぶわけでもない。
しかし、あたたかなペンのタッチとやわらかい広島弁で語られるさりげない日常が
ページをめくるごとに、徐々に壊れていく。
その様子が切ない。
だからこそよけいに、今平和で生きている私たちに「戦争」というものの重さを
突きつけられているように思う。
たしかに「あの戦争」から60余年が過ぎた。現在の価値観であの戦争の是非を論じるのは
ナンセンスなのかもしれないと私も思う。
しかし、それでもやはり戦争は起こってはならない。
そう思うことにこそ意味があると思う。
19年12月、幼なじみの水原が呉を訪ねる。すずが密かに思いを寄せていた男性だ。
夫の周作は水原を「申し訳ないが、わしはあんたをここに泊めるわけにはいかん」と
納屋の二階に泊まらせる。しかしすずに、
「あんかをつけた。もっていってあげんさい。そいで折角じゃしゆっくり話でもしたらええ」
と、水原のところに行かせる。
「もう会えんかもしれんけえのお……」と。
人類の歴史は戦争の歴史でもある。戦争が歴史をつくったともいえる。
だからといって、戦争は「是」なのだろうか。
戦争の影には、この本で描かれているような「ゆるやかに壊れていく日常」があることを
私たちは考えなければならないし、感じなければならない。
スクリーントーンをいっさい使わない、こうのさんのペンが、控えめにそう言っているように思える。
小さな幸福と近づく世界の終わりおすすめ度
★★★★★
日々の小さな出来事に一喜一憂しながらそこそこ楽しく暮らしてゆける、というのは、当たり前のようだがなかなか得難い幸福である。現代のように「欲」に旺盛な世相では、つつましい暮らしに幸せを見出せる人とくに若者は、そう多くないだろう。主人公である「すず」は、戦時下の厳しい制約の中で、ほんのわずかな幸せを抱きしめて生きてゆける健気な大和撫子である。鬼畜米英と狂乱していた時代の庶民の心情をイメージすることはもはや難しいが、恐らく大半は世相批判などと無縁に、こうして毎日を平穏に暮らしていたのだろう。しかしやがてあと数ヶ月で、未曾有の惨禍がすずの故郷・広島を襲う。
友人が昔、ある女性から望ましい女性のあり方を聞かれ、「かなしい女性」が好きだと答えたら、「女性観が貧困」とその場で一刀両断された由。友人はその女性とは決して近づきになりたくなかったから、わざとそう言ったらしいのだが、私は20数年経った今も、戦後の男女の縮図を見る思いでこのエピソードを思い出す。すずが聞いたら何と言うだろう?困ったような笑顔で、肯定も否定もしないのではないか。そして、それが品格というものである。
まさに夢のコラボです。
おすすめ度 ★★★★★
はっきりいって、すさまじい出来です
!いや~、ほんと(・∀・)イイ!久々に良い買いモンをしました。
ご参考になれば幸いです。大変お勧めですよ!!